4-1
図1ソフィア・ローレン(J型、イタリア生)、イングリッド・バーグマン(V型、スエーデン生)
   トム・クルーズ(V型、イギリス・アイルランド・ドイツの混血)、J.F.ケネディ(V型、アイルランド系)

世界各国について耳垂型の分布を調査したデータはあるのだろうか。
専門家でない私には情報がない。
Yahoo!USAで「earlobe」を検索すると、Earlobe Wikipediaに古いデータがあるが、あまり信用できない感じである。
読者諸賢でよいデータをご存じの方は、是非ご教示ください。
とりあえず、ネットで得られる画像や動画、テレビニュースの映像などで観察した。

北部地方(例:スエーデン、ノルウェイ、ロシアなど)にV型が多く、南部地方(例:スペイン、イタリア、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニアなど)にJ型が多いことは知られている。
高温地域では放熱のため耳が大きいのは合理的である。
私は子供のとき、冬になると耳垂が凍傷になるためウサギ毛の耳あてを着けなければならなかった。
北国は寒いので、耳垂が小さいV型が理に適っていると思ったが、モンゴルではJ型が多い。
(相撲の朝青龍・白鵬・日馬富士・旭天鵬はJ型である。鶴竜・照ノ富士はV型)
一筋縄ではいかないようだ。

4-2a●朝鮮半島・中国
  図2 朝鮮半島・中国住民の耳:
4-2b
        釜山                  慶州
4-2c
        ソウル                    平壌
4-2d
                       瀋陽(奉天)                北京

韓国の釜山や慶州ではJ型がかなり多いような感じである。
ソウルや北朝鮮はV型が多い。
瀋陽(中国東北部)は圧倒的にV型が多い。
中国は広大なので一概に言えない。北京・上海・広州市ではV型が多いようだ。
東南アジア、例えばシンガポールでV型の東洋人をみると中国人系(華僑など)を想像する。

篠田謙一氏は分子人類学の権威である。(国立科学博物館人類研究部長)
「NHKサイエンスZERO」で『弥生人DNAで迫る日本人の起源』(2018年12月23日放送、オンデマンドあり)に出演した。
  (関連図書: 篠田謙一 2019年『新版 日本人になった祖先たち』NHK BOOKS)

篠田氏によると、東南アジアから初期拡散によって東アジアの海岸線に沿って北上したグループが、台湾付近からカムチャッカ半島に至るまでの広い沿岸地域に定着し、その中から日本列島に進出する集団が現れた。
日本列島に西から入った集団は3万~2万年前に、北からの集団はは2万年前以降に流入し、これらが縄文人の母体となった。

弥生時代になると、朝鮮半島や中国の江南地方から渡来系弥生人が流入する。
やがて縄文・弥生両系の人たちの間に混合が始まり、北九州から東方へ進展し現在に至る。
なお篠田氏は日本人の遺伝的な構成については古墳時代までが変動の時代だと述べているが、私は飛鳥時代も含めるべきものと考える。

現代日本人にDNAの大部分を伝えているのは渡来系弥生人であると、篠田氏は強調する。

4-3 ●2020-07-30 (2) - cut - コピー
 図3 東アジアの現代人と縄文人、弥生人を含めた主成分分析の結果

私が最も興味を引かれたのは、図3である。
それぞれの集団の核DNAを分析したものだが、私の理解では一直線上に並んでいる集団は類縁関係で、近いものほどその度合いが強いらしい。

ベトナムキン族・南中国漢民族・北京中国人が一直線上に並んでいることは、東南アジアから東アジアの集団が互いに関係を持ちながらも、ある程度遺伝的に分化している様子を示している。
一方現代日本人はこの大陸集団から離れてたところに位置しているが、縄文人ははるかに離れている。
渡来系弥生人は現代日本人の範疇に入っている。

更に大きな問題は、韓国の現代人が日本と北京中国人の中間に位置していることであり、
これは朝鮮半島集団の基層にも、縄文につながる人たちの遺伝子があることを意味する。